狭く屈折あり

【 <書評>東京奇譚集 村上春樹 】
実は村上春樹という小説家を最近まで食わず嫌いしていて、二ヶ月前やっと「ノルウェイの森」を読んだ。
結論から言うと、凄く引きこまれたし、今まで読んでいなかったことを後悔したと同時に、これからこの作家の文章を読めることに幸福感も感じた。

で、偶然入った古本屋で発見したのが本書。

短編集。
大体すべての登場人物が何か欠落していて、それを何かのきっかけで取り戻すなり、欠損に気づくなり、再解釈を行ったりする。
話の筋自体は、取り立てて感動することでもないのだけれどやっぱりそこは村上春樹。
軽妙なリズムと、センテンスの置き方で心のひだを付いてくる。
かゆいところに手が届く。
こういう言い方があったか〜と関心させてくれる。

お風呂で読むのに最良の一冊。
だった。

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    【 <書評>「老病死に勝つブッダの智慧」アルボムッレ・スマナサーラ 】
    宗教としての仏教と、哲学としての仏教。
    原始仏教は、殆ど後者であると僕は解釈している。
    ではなんの哲学なのか?
    それは自然と生き、そして自然に死ぬという当たり前の事を当たり前にできるようにする哲学だ。

    何も無いという所から出発するこの思想は、まさにこの本の表題「老病死」という、自然科学や東洋哲学ではフォローすることのできない人間の苦痛の根幹と向きあうための哲学なのだ。

    本の内容はすこぶる分り易い。
    分り易すぎるくらいに、平坦な文章で書かれている。

    内容は下記ような感じ。

    人は100%死ぬ。
    逆らうことはできない。
    だから、その間幸せに生きるべきだ。
    幸せに生きるためには、正しい生活をし、正しい考え方をするべきだ。
    そうすれば病気も、精神疾患も治る。
    治らない病や、老いは観念する心構えができる。

    これが結論であるようで、なんども同じ文脈で語られる。
    病が治る等の下りは眉唾もので信じるに値しないが、その考えの根本にある無常、苦、非我の考え方は参考になる。
    無常というと、空虚で冷たい、空っぽのもののように感じるが、著者は「明るく幸せに生きよ」という。
    当たり前といえば当たり前だが、やもすれば無常の前に立つ人の自暴自棄を改めて思い直させる立ち位置だ。

    自分なりのエッセンスを抽出して読めば、為になる一冊。


    でもしかし改めてフィッシュマンズと原始仏教は、近しいものがあるな。


    下記引用とメモ

    ◆人は誰でも年を取り、年をとったぶんだけ体にもガタが来る。
     昔と比べてダメになったとか、食欲増進の薬を飲んだりするのは意味のない行為。

    ◆人生はいくら頑張っても結局は水の泡

    ◆だから気楽に生きたほうがいい

    ◆人は孤独で死に至る。屠場にひかれる牛のように。

    ◆人間の体から出るすべてのものは不潔で、不浄。便所のようなものである。
     


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      【 <書評>死の教科書 】


      産経新聞一面での特集「死を考える」を加筆修正した書。
      新聞らしく、取材を基に人の死とは何かに迫っている。

      この「新聞らしい」というのが本書の何よりの特徴だ。

      主人公である取材対象者の横に寄り添い、想いを聞き、届ける。
      ジャーナリズムの根幹とも言える作業を実に丁寧な仕事で書き出す。
      やもすればジャーナリズムはセンセーショナルな要素と表裏なように捉えられがちだが、それは違うと本書を読めば感じるだろう。

      それは、

      尼崎脱線事故の遺族、加害者企業、教育者、子供、自殺者、自殺者遺族、死刑囚、葬儀関係者、患者、医師、兵士・・・。

      其々の死の現実を残酷なほどに、僕達の目の前に突きつける。


      下記引用とメモ

      ◆「死ぬ者に最も軽い試練を課すような死に方は、あとに残るものの衝撃を最も激しくする死に方である」

      ◆「幸福な家庭はお互いに似ている。不幸な家庭は不幸の度合いを異にしている<トルストイ>」

      ◆今でも火葬場にて一部燃え残った遺骨の多くは、
      「自然サイクル保全事業協同組合(ググッてもでてこない。名前かわったのかな)」http://www.ne.jp/asahi/koto/buki/bukkou/2006/sousou2.htm
      によって集められ、能登半島にある残骨灰処理事業者の元に集められてサラサラになるまで熱せられて処分されるらしい。

      自分が死んだ後、誰か知らない人たとゴチャ混ぜにされるんだね。
      知らなかった。
      それはそれで融和か循環か。
      いい気分も悪い気もしないな。

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        【 <書評>「ヒトはどうして老いるのか」田沼靖一 】
        最近読んだ本ならいざ知らず、昔読んだ本などは内容をすっかり忘れている。
        折角それなりの時間をかけて読み、それなりに感じた事もあっただろう。
        なのに、忘れている。

        自分の頭の悪さを呪いつつ、それを実に勿体無いと思ったので、最近本棚にある昔の本を風呂場等でぱらぱらとめくってみている。

        するとまず、新しく本を読むのと違った読書感が得られる事に気づいた。
        そして、当時読んだときの感覚が蘇ってくる。
        また一方で27歳の今読み直すとまた異なる感想を持つことにも気づいた。

        勉強が身になるには復習が大事だとも言う。
        暫くは、続けてみようかなどと思った。



        そんな前向きで後ろ向きなマイブームをきっかけに、少しづつ文章の書き方の練習も兼ねて、書評というかメモのようなものを書いてみる。
        多分長くは続かないが、まあゆっくり。



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        ヒトだけではなく、この世界の世の全ての存在は老い、死んでいく。
        それは、未来永劫人類がどれだけ科学を発展させ、生命科学が進歩を遂げ、遺伝子操作や臓器製造が可能になろうと逃れられない運命だ。
        宇宙の終わりはいづれやってくるのだから。
        今も未来も死から逃れられない事は等しく平等だ。

        とはいっても、死は怖い。
        みんなすぐに悟ることができたら戦争もなくなるだろう。

        では疑問。

        何故我々は「老い」るのか。

        その
        「何故」

        「どのように」
        を、生物学というより、細胞生物学や遺伝学の分野から解説したのが本書だ。
        下記、抜粋と備忘録


        ◆生物の一生は成長期、生殖期、後生殖期に分けれられる。
         人間で言うところの、後生殖期は40歳くらいから始まるそうだ。
         生殖機能だけでなく、臓器や循環器系もそのころから衰えるスピードが早まり始める。
         通常、生物は生殖期を終えると短期間で寿命を終える。
         ヒトだけが後生殖器に於いて、長い寿命を獲得している生物なのである。

        ◆ヒトの限界寿命は120歳で、これ以上生きられるヒトは殆どいない。
         (死がプログラムされていることの反証か)

        ◆子孫を残すことが生物全体の究極の目的であることから、
          エロス<性>とタナトス<死>は密接に関係している。

        ◆死という概念が生まれたのは、有性生殖が始まってから。
          死と対極にあるのは「生」ではなくて「性」

        ◆細胞の老いは
         <分裂寿命>と<テロメア>によってもたらされる。 
         それぞれ寿命による死と、組み込まれてプログラム化された死で性質は異なる。
         が、それが個体としての死を運命付けることは間違いないようだ。

        ◆細胞と臓器と個体としての自己。
         生命と環境と地球。
         地球と星系と銀河と宇宙。
         どれも個の死が全の死と関係し、全の死が個の死に影響を与える。
         周り、巡り影響する。
         全ては死を免れない。
         エネルギー保存の法則からは、逃れることはできない。

        ◆抜粋「残された時間を感じながらも、ひとりひとりのがここの理想に向かって歩む中で自分というアイデンティティを追求できる時間が「老い」だと思います」
         インドでは学習記、家住期、林住期、遊行期と人生を四つのステージに分けている。
         最後の二つはまさにこの人生の最期のステージで安らかな気持ちで行いたいものだ。

        ◆抜粋「充実した生命は長い。充実した日々はいい眼を与える。充実した生命は静寂な死を与える「<レオナルド・ダ・ヴィンチ>」


        全体として繰り返しが多く後半は冗長さが目立ったが、門外漢にとっては難しい内容を簡単に解説してくれるのは助かる。
        また、ドーキンスなどの進化論的なアプローチじゃないので、暗い気持ちにならず、また新鮮な知識をくれるので面白い。




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          【 星屑 】
           ポールデイビスという宇宙物理学者の書いた「宇宙最後の三分間」がとても面白かった。
           
           宇宙はエントロピー増加の法則や、ビッククランチによっていずれ消滅するだろう(説明はここでは省く)。
           時間も概念もない「無」が私たち人類、及びその残存物を飲み込むだろう。
           歴史を記録するものはない。
           我々の発展や生存は太虚の中へと投げ込まれる事となる。
           だとすれば、私たちの生とは無意味なのか?
           永遠は存在するのか?
           価値とは継続にあるのか?
           

           そんな悶々とした事を考えている(事のある)人にオススメの書。
           理系の内容なのに平坦で分かり易く、理系は赤点文系オタクの僕でも理解できました。
           果てしない思索の海に飛びたてます。
           最近そんなこと考えて欝になりかけた自分がこの書のお陰で突破できました。
           余計暗くなる人もいると思うけど、「存在と価値」について興味がある人は一読の価値ありです。

           そのなかで、目からうろこだった事。
           宇宙は最初、ビックバンで誕生したメタンとかヘリウムのようなガス状の元素しかないらしいのです。
           そして、そのガス状の物質が引力よって集合したのが、太陽のような恒星。
           恒星が爆発した際に超新星になる。
           その時始めて爆発による超高温と高圧力で、金や鉛、ウランといった鉄より重い物質が生み出される。
           元素合成の初期段階では酸素や炭素なども作られる。
           そうして宇宙に飛びだした滓がまた重力によって集められると、それが私たちの今まさにたっている地面<地球>になるのです。
           
           つまり私たちの体を含む、この地球の生きとし生けるもの全ての構成物は遥か昔に死んだ星の核で出来ているという事です。
           今こうしてパソコンを見ている眼球も、それを操作する脳も、キーボードをたたいている腕も全部、いつか燃え盛っていたどこかの太陽の一部。

           そう考えると、私たちの精神や、想い、果ては夢も、星の残滓で出来ている事になる。
           
           悠久の昔に眩いほどの光を放って炸裂した星に想いを馳せる。
           星の欠片で出来ている肉体を使って。
           
           

           いつか自分の体も炸裂してどこか遠い星の誰かの夢の一部になるのだろうかと思うと、悪い気はしない。

           


           

           さらにひとつ。
           宇宙誕生後に生成されたニュートリノという粒子は、現在も全く変わることなく、宇宙空間を常に満たしているらしい。
           私たちの体内には、その宇宙生成時から変わらぬ、ニュートリノが常時1000億個存在しているらしい。

           ニュートリノが<永遠>だとするならば、永遠という問いへの回答は、私達が思っていたよりももっとずっと身近な所にあったのである。

           
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            | 書評 | comments(0) | posted by curlcord |
            【 555 】
            去年、日本全国で窃盗された女性下着の総数はなんと、18416件(被害届けがでているだけで)だそうです(笑)
            すんごいっすね。
            男性の鬱屈の渦が蠢いてるのをリアルに感じますね。

            忌むべき犯罪ではありますが、なにかちょっと不謹慎にも笑ってしまう、アホなニュースでした。

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              | 書評 | comments(4) | posted by curlcord |
              【 サド公爵夫人 】
              まーーーー

              「就活とは、否定の連続である。」
              いやいや、俺はそんなに打たれ強くできたないから_(._.)_

              そいや、昨日「電車男」読みましたよ。
              全部立ち読みで。
              なんか、幸福な気分になりました、、。
              あれ、面白いっすよ?
              いつもは暗くて卑屈でインテリで醜くてもてない2チャンの毒男たちが昇華されていくのがなんとも美しい。
              希望をもたせてくれる。
              ブ男の逆襲というか、それこそ、意地を感じるよ。
              卑屈になりすぎて、人間性を失うぎりぎりのところで彼らは人間的な行為をするんだ。
              なんか映画「インデペンデンスデイ」で団結して宇宙人と戦ったとこの最後のカタルシスみたいなものがありました。
              普段、「文学とは」とか言ってて、だけどああゆうのも、「文学」になるのかなあ、などと国語の先生が聞いたら怒られそうなことを考えたりもする。
              ブ男たちが世の中の美の軍団に向かって電子の世界で翻す反旗は、なんだかすこし照れ隠しのような皮肉を交えながら、最後の大団円に向かって収斂していく、そこでのカタルシスがすごいんです。
              「おまいら>大好き」
              という電車の台詞…。
              よいです。



              でもまあ、編集前の本とのスレを見ると、結構えげつないこと書いてあったり。
              「電車男エロ小説発言」とか「自作自演説」とか「仕込みネタ説」
              とかもあり、真実は闇の中にあるみたいで。
              でもたとえフィクションとして読んだところでも面白いからお勧めします。
              でも立ち読みで全部読めるから、買う必要はないけどね。
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                【 二流の人 】
                しかし、最近、川端康成の「掌の小説百篇」を読んだのですが、本当に氏のセンスには脱帽です。
                「泉のような才能」などという使い古された表現を使いたくなってしまうほどに、湯水のごとく珠玉のアイデアの宝庫であると感じました。
                 いつか、私も、彼の様な文章が…とは恐れ多くていえませんが、その袖の一端くらいの文章が書けるようになってたいもんです。
                 志はたかく!
                 その道は万里の如く遠いが(-_-;)
                 
                 
                 あ、あと川端の「愛すべき人達」も読みました。
                 非常に面白かったです。
                 もう、氏の描く女性像は完璧ですね。
                 小説になっている分、映画みたいな変なヴィジュアルに邪魔されずに、その美の可能性が読むものの頭の中で無限に広がってゆくんです。
                 各個人の脳内で「いい女像」が選別され、味が増してゆくんです。
                 さらに男が、没個性、没魅力的な分、その美しさは波状攻撃で押し寄せてくる。
                 
                 個人的には「夜のさいころ」がおすすめ。
                 
                 さいころと和服美女。
                 
                 …よくもまあw
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